法人を設立すると役員報酬を決める必要があります。
今回は1人社長で妻も役員にした夫婦で経営する、
創業間もない小規模な法人のケースでは役員報酬はいくらがよいのか。
結論から言うと、
社長である夫の役員報酬は「月額66万円」まで、
妻の役員報酬は「8万円」までがおすすめです。
個人事業主では個人と会社のお財布は同じですが、
法人になると個人と会社のお財布はきっちりと分ける必要があります。
つまり、個人事業主なら稼いだお金を事業や生活費に自由に使えますが、
法人になると法人で稼いだお金は事業にしか使えず、
法人から役員報酬として受け取ったお金だけが
個人として生活費など自由に使えるお金になります。
役員報酬の金額によって、支払う税金と社会保険料の2つに影響します。
役員報酬は個人の給与所得になるので、
次年度の確定申告で所得税と住民税の対象になります。
個人で支払う所得税は「給与所得」から「控除」を
差引したあとの金額(課税対象額)よって税率が変わります。
「所得税」は課税対象額が195万以下なら5%、195〜330万なら10%、
330〜695万なら20%、695〜900万なら23%、900〜1800万なら33%、
1800〜4000万なら40%、4000万以上なら45%になります。
この所得税に加えて、「住民税」は一律10%ほどです。
役員報酬を多くして給与をたくさん受け取ることで、
所得税の税率が増えていくことになります。
この所得税の税率が何%までなら
法人にお金を残しておくよりもお得になるのか。
法人として支払う「法人税」の目安を25%〜30%と考えると、
個人での住民税は一律10%なので、所得税は「20%」までとなります。
所得税が20%の課税所得が「695万円」までになります。
課税所得は「給与から控除」を差引したあとの金額で、
この「控除額」は一人一人違いますが、
仮に100万円ほどの控除がある場合では、
795万円まで給与として受け取ることができます。
つまり、795万円を月額にした役員報酬は「66万円」となります。
社会保険料は役員報酬が多くなればなるほど、
支払金額が多くなります。
法人になると社長は社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が必須になります。
個人事業主では国民健康保険と国民年金でしたが、
法人になると健康保険と厚生年金への加入になります。
社会保険料は役員報酬が月額55000円(年間66万円)までが
もっとも安い支払い金額23,000円(健康保険7000円、厚生年金16000円)です。
この支払い金額は地域によって多少の違いがあります。
「厚生年金」は役員報酬が88000円までは55000円の時と同額の16000円ほどです。
「健康保険」は役員報酬が68000円、78000円と約10000円上がるごとに、
約1000円ずつ健康保険の支払額が増えます。
では、社会保険料の上限はいくらなのか。
厚生年金は役員報酬65万円以上になると支払額は増えなくなります。
65万円での厚生年金の支払額は11万円ほどです。
健康保険は役員報酬139万円以上になると支払額は増えなくなります。
139万円での健康保険の支払額は13〜16万円ほどです。
つまり、社会保険料といっても「厚生年金」と「健康保険」で
役員報酬に対する支払額のルールが違うということになります。
厚生年金は支払う額が多いほど、将来受け取れる「年金」が増えますが、
健康保険は支払額が多くても、受けられるサービスは特に変わりません。
社会保険料という点で役員報酬を決めるとすると、
厚生年金の上限になる「65万円」が一つの基準にするとよいでしょう。
妻を役員にする場合の役員報酬は、
扶養にすることを考えた場合、役員報酬は「8万円」までが良いでしょう。
妻が受け取る年間の給与は96万円になり、
103万円以下ですので扶養に入れることになります。
扶養になることで、社会保険料の支払いも必要ありません。
法人を設立して決める必要のある役員報酬について、納める税金と社会保険料から社長の役員報酬は月額66万円迄、妻は扶養の範囲内を優先して8万円迄が小規模な夫婦で経営する法人にはおすすめの金額です。